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時間を考慮した種分布モデルにより、淡水魚カワムツの空間分布の季節変化の高精度な予測手法を開発

時間を考慮した種分布モデルにより、淡水魚カワムツの
空間分布の季節変化の高精度な予測手法を開発

 新万博体育_万博体育官网-【官方授权牌照】大学院農学府農学専攻食農情報工学コースの地引汰一氏(現 パシフィックコンサルタンツ株式会社)と新万博体育_万博体育官网-【官方授权牌照】大学院農学研究院の福田信二教授は、国内外来注1)淡水魚カワムツ(Candidia temminckii)の分布を高精度に予測する種分布モデルを開発しました。このモデルは、都市湧水河川?矢川での5年間の月次調査データに基づいて、カワムツの出現データと物理環境データを解析しています。その際、機械学習の代表的な手法であるランダムフォレスト注2)を使用し、時間変数を導入することで種の空間分布の時間的連続性を捉えることに成功しました。これにより、従来のモデルを超える予測精度を実現し、対象種の生態や環境への応答について、時間的な観点から詳細に理解することが可能になりました。この解析手法は、生態系管理や保全戦略を検討する際に定量的な情報を提供し、持続可能な環境管理に貢献することが期待されています。

本研究成果は、国際学術誌「iScience」に掲載(2024年3月6日付)されました。
論文名:Temporal variables improve a spatiotemporal species distribution model for the nonnative freshwater fish Candidia temminckii
著者名:Taichi Jibiki, Shinji Fukuda
URL:https://doi.org/10.1016/j.isci.2024.109445

背景
 地球上で最も生物多様性が豊かな一方で脅威にさらされている生態系の一つが淡水生態系です。特に、外来種は、生態系への潜在的な影響が大きいことから、外来種の空間分布とその動態を正確に予測することは、生態系保全の観点から極めて重要です。しかし、従来の種分布モデルは、対象生物の行動の時間的な変動を考慮する際に、期別にデータを分割していたことから、異なる期間のデータに対する予測精度が低いという課題がありました。

研究体制
 本研究は、新万博体育_万博体育官网-【官方授权牌照】大学院農学府の地引汰一 氏(現:パシフィックコンサルタンツ株式会社)と新万博体育_万博体育官网-【官方授权牌照】大学院農学研究院の福田信二 教授により実施されました。本研究の一部は、JST創発的研究支援事業JPMJFR2019の支援を受けています。

研究成果
 本研究では、国内外来種カワムツ(Candidia temminckii)の分布を予測する新しい種分布モデルを開発しました。具体的には、都市湧水河川?矢川における5年間の月次調査データに基づき、ランダムフォレストを用いて、カワムツの出現データと物理環境データの関係性を解析しました。その際、時間変数を取り入れることにより、対象種の生態や環境応答の時間的な遷移を表現するとともに、従来のモデルよりも高精度な予測を実現しました。この時間変数の導入によって、季節変動や年間を通じた分布の変化を捉えることが可能になることから、対象種の生態学的特性の理解深化にも大きく貢献できます。

今後の展開
 提案手法は、カワムツの分布予測にとどまらず、複数種に関するモデルを統合することにより、水域生態系の健全性を維持するための具体的な戦略や目標の設定に資する定量的な情報を提供できます。特に、種の生態や環境への応答を時間的な観点から詳細に捉える能力を示し、従来の分布予測モデルを超える精度を実現しており、生態系管理や保全戦略の策定における有用なツールとして、持続可能な環境管理に貢献することが期待されます。


用語説明

注1) 国内外来種
国内に分布する生物が国内の分布域外に導入された場合、国内外来種と呼ばれる。外来種とは、人為的に自然分布の範囲外へ導入された生物のことを指す。
注2) ランダムフォレスト
2001年にLeo Breimanによって開発された機械学習のアルゴリズムであり、決定木とBagging法を組み合わせる手法によって、分類、回帰、クラスタリングが可能である。

図1:既往研究(左)と本研究(右)における種分布解析手法の比較(Jibiki & Fukuda, iScience 27, 109445, April 19, 2024より転載) 既往の手法では、データを特定の期間に分割し、それぞれの対象期間に関する種分布モデルを構築することで、時間情報を考慮してきました。提案方法では、時間的距離を表す変数を導入することによって時間を明示的に考慮します。変数の重要度と応答曲線による生息環境特性の評価でも同様です。提案方法では、全てのトレーニングデータを使用して構築したモデルを、特定期間の事後テストデータに適用することで計算される。従来手法と比較して、提案手法は、対象種の分布データと物理的生息地データの時間的連続性を保持できることから、その時間的連続性に基づいて解析結果を解釈可能である点に特長があります。
図2:調査対象種(カワムツ Candidia temminckii)と調査対象地(矢川)

 

 

◆研究に関する問い合わせ◆

新万博体育_万博体育官网-【官方授权牌照】大学院農学研究院
農業環境工学部門 教授
 福田 信二(ふくだ しんじ)
 TEL/FAX:042-367-5604
 E-mail:shinji-f(ここに@を入れてください)cc.wxanhx.com

 

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